「アリサ様、もういいのではないですか」
ゆっくり振り返れば、揺らぐ瞳が俺を見つめ返してくる。
だから優しく微笑んで続けた。
「もう十分でしょう」
この人は本当はぜんぶを覚えている。
エマお嬢様のことも早乙女のことも。
そこにどんな思いがあるのかまでは分からないが、その姉妹に壁があるのなら取り外してあげたいと思っていたのは本当だった。
「…なんの、話を…しているの…?」
「そのしおり、四つ葉のクローバーですね」
テーブルに置いてある分厚い本。
それはアリサ様が愛読しているものだという。そこにいつも挟まれている、ひとつのしおりがあった。
そこに押し花とされている、四つ葉。
「エマお嬢様が誰かに四つ葉のクローバーを与える理由を知っていますか?」
「し、知らないわっ!!そんなのどーだっていいのよ!!
私はあの子のことなんか昔から大嫌いなんだから……っ!!」
やっぱりだった。
これは半分、賭けのようなものだった。
もしかすると事故の後遺症は本当なのかもしれないと思っていた面もあって、だけどそれはやはり違った。
「柊としてずっと努力してきたのは私なの……!!それなのに腹違いって理由だけでエマは自由に生きてた、
そんなの許せるはずがないでしょう……!?」



