ぎゅっと背中を掴んでくる。
すがるように掴んで、俺が振り向いて抱きしめ返すのを待っているのだろう。
「真冬くん」
そう思うと、この姉妹は似ているような気もする。
エマお嬢様もいつも言葉にはせず、俺にすがるようにして名前を呼んできた。
そんな姿が可愛くて愛しくてたまらなくて、だけど俺は執事だから自分本位には動けない。
だからあなたが認めてくれさえすれば、命令を下してくれさえすれば、何だとしても動くというのに。
だけどまさか早乙女 燐があんな形となって現れるとは思っていなかった。
「真冬くん、あなたになら何をされてもいいわ」
「駄目ですよ。簡単にそんなことを言ってはいけません」
「寂しいの…。お願い」
まるで命令だ───とでも言うように言ってきた。
だけど俺にとってのお嬢様は1人しかいない。無邪気で大胆で、それなのに本当は誰よりも臆病なお嬢様。
本当はいつまで意地を張っているんだと、少しいじめてみただけだった。
俺のために流す涙をもっと見たくて、もっと泣いてほしくて。
だけど目の前にすると愛しさが込み上げてくるから抑えが利かなくなる。



