「えっ、どうして早乙女様がここに!?」


「きゃーーっ!黒髪もお似合いですわっ!」



え、……なんか背中からそんな声が聞こえるのですが。

気のせい…?
ここは振り向かないほうがいい…?


自分の席に大人しく座って、減ってきた茶道の課題を片付けることに集中したほうがいいよね……?



「エマお嬢様、本日からあなたの専属執事になりました。早乙女 燐でーす」



目の前にあっけらかんとした影ができた。

反射的に顔を上げてみると、グレーのタキシード姿にシンプルなアクアマリンが付いたループタイを合わせた男がいる。


わたしを見下ろして浅くお辞儀をする姿は、いつかの誰かを思い出した。

けれど確実にその人ではなくて。



「えっ、なにしてるの……!?」


「言ったとおりですよ。今日からエマお嬢様の執事となりました。よろしくお願いしまーす」


「いやっ、いやいや!なにかのコスプレ!?」


「は?俺が着るとコスプレになるのかよ。真面目にガチなんだけど」



いやいやいや!だっておかしいもんっ!!

早乙女財閥の跡取り息子なにしてんの…!?

確かに悔しいくらいすっごく似合ってるけど……!!