「どうかしたの…?早乙女…?」


「…ちょっと見ないで、てか俺帰るよ」


「え、あっ!一緒にテレビ見よーよ!」


「ほんとに帰るから」



そんなに帰りたいの…?

まだ時間は20時前だし、あなた車だからいいじゃん…。

できればわたしが眠るまでいてくれないかなぁなんて思っちゃったりしてる。


思わず顔を覗いてみれば───



「……真っ赤、」


「見るなって言ってるだろ、わんころ」


「あっ!その呼び方やだっ!」



すっごい真っ赤だ…。
初めてこの男のそんな顔を見た。

すると早乙女 燐はもう1度、「前は泣かせてごめんね」と謝ってくる。


そして優しい顔で瞳を伏せると、噛み締めるようにつぶやいた。



「…やっぱ笑ってる顔のほうがいーや」


「え、だれの話…?」


「どう考えてもお前だろ。エマってそんなに可愛かったんだね」


「っ!」



なんか悔しい。

だからわたしだって仕返しても許されるような気がして、顔を覗き込んでニッと意地悪に笑ってやる。



「早乙女、真っ赤だよ~?あれ?どうしたの?リンゴみたいっ!」


「っ、うるさい、…おすわり」


「なっ…!そんなわんころを好きになったくせに!」


「…悪いかバカ」



この人ってわたしが思ってたより悪い人じゃない───って、初めて思ったかも。