そのままわたしの頬に唇を寄せてきた。
避けようとしたって添えられた手が逃がしてもくれない。
「っ、や、」
ちゅっ───…。
まるで静かな教室にわざと響かせてくるみたいだ。
涙をすくうように、何度も何度も濡れるほっぺに落とされてしまえば力なんか抜けてしまう。
「なんで…っ、こんなことするの…?」
「…他の男と比べたらお仕置きだと言ったでしょう」
「もう執事じゃないもん…っ」
もうやだ…。
どうしてハヤセにキスされただけで涙は呆気なくも止まっちゃうの。
「っ、」
すると彼は耐えきれなくなったように抱きしめてきた。
はあっと、熱くて切ない吐息と一緒に腕の中にわたしを隠してしまう。
「ちゃんと睡眠は取れていますか?怖い夢は見ていませんか?」
「…前ね、歯がぜんぶ抜けたおばあさんが追いかけてきた…」
「……どんな夢ですかそれ。怖すぎるでしょう」
ふっと笑わられた。
それでも和らがない雰囲気はどこか緊張を生んでしまう。
ドクン、ドクン、ドクン───…。
そんな心臓の音だって、わたしだけのものならこんなにうるさくないはずだ。
「…だから頑張って…ひとりで寝てる、」
ぎゅっと、すり寄るようにして抱きしめる力が加えられた。



