「駄目です」
そんなふうに言ってくれるハヤセがいるだけで十分な気もしてきた。
だけどあなたは執事だ。
わたしに仕える執事だ。
執事以上を望んではいけない、そんな立場の人間のはず。
「俺にもっと弱さを見せてください、エマお嬢様」
「…見せてるよ」
「見せてないでしょう。あなたはいつも、どうしてそんなに健気に笑っていられるのですか」
わかんない。
それがわたしがわたしを守るための唯一の方法なのかもしれない。
馬鹿になるの、馬鹿になればみんなが「馬鹿だね」って見るから。
そんな自分で満足してるんだよわたし。
「だ、だってびっくりしたもんっ!お姉ちゃんとハヤセが許嫁だったなんて!」
こうやってね、馬鹿になるの。
いつもの調子で言うとあなたもホッとするでしょ…?
どんなにひどい目で見られたとしても本人が気にしていなければ、それは無かったものにできるから。
そうやってわたしは今までずっと聖スタリーナ女学院で生きてきた。
柊家の落ちこぼれとして生きてきた。
「なんで教えてくれなかったのっ!あっ!もしかして恥ずかしかったとか~?」



