俺の言うとおりにしてください、お嬢様。





気づけば屋敷を出ていた。

何ひとつ解決しないまま大きな門を飛び出して、脱け殻のように歩いた。


帰りは迎えに行きますので呼んでください───と言われていたけど、そんな気にもなれなくて。

スマホを握ったまま寮のマンションへ向かう。



「ただいま…」


「エマお嬢様…!おかえりなさいませ、お迎えは───」


「使用人に頼んだ…」


「…そうでしたか」



ごめん、嘘ついた。

わたしハヤセに初めて嘘ついちゃったかもしれない。



「…アリサ様には会えましたか?」


「うん。会えたよ、元気だった」


「そうですか…。よかったです」



よかったって、なんで……?

てかどういうこと?
許嫁って言ってたのはどういうこと…?



「エマお嬢様…?どうかされましたか?」



どうかされすぎてるの。

もう色々よく分からないし、受け止められないし、結局わたしは何ひとつ解決してないもん。


でも「おかえり」って言ってくれたハヤセにちょっとだけ泣きたくて。

いろんな意味で泣きたい……。



「ハヤセ、わたし……早乙女 燐と結婚するよ」



え…?と、静かに消えたハヤセらしくない返事。