マイクがキィィィンと鳴って、お嬢様の耳を塞ぐ執事たち。


本当はわたしだってこんなところじゃなくて公立高校に通いたかったもん。

毎日毎日執事が付きっきりの全寮制の学校生活だって嫌すぎる。



「そこの執事!!貴様も何をしているんだ!!」


「はっ、はい…!申し訳ございません…!!」



今だって樋口はヘトヘト。

わたしのせい…?

確かにわたしは迷惑ばかりかけてる問題児だけど…。



「…絶対やめる、こんな女の執事なんか辞めてやる…」



そんな樋口の独り言。

樋口だけじゃない、今まで辞めていった執事はみんなそうだった。


最初は”柊“という名前に自分から近づいてくるのに、必ず最後はそう言って離れてく。

求められてるのはわたしじゃなく、お姉ちゃんと柊家だけってこと。



「───…」



一瞬、見守るようにうしろに立つ彼と目が合った。

すごく優しい顔してた…。


大丈夫です、エマお嬢様。
あなたはあなたのままでいい───と。


そう言ってくれているような気がしたのは気のせいかな…。