「お前の気持ちはからかって遊びたいだけだろ」


「それがさぁ、困ったことにちょっと違うんだよ」


「…ちがう?」


「あいつ、問題児の破壊神とか呼ばれてるんだろ?それをあんなあっさり泣かせちゃったなんてさ、……ゾクゾクしたんだよ」



あぁ、こいつは俺と似ているかもしれない。

心の奥に眠る独占的な支配欲を何よりも掻き立ててくるのだ、エマお嬢様は。


自分のものにしたい、俺だけの女にしたい、一瞬でもそう思ったなら終わりだ。

それはもうあの子の目に捕まってしまっている証。



「もっと見たいんだよ、あいつの泣き顔。
それでいっぱい泣かせたい。…俺が」



───…ビンゴだ。

俺だけが知っていればいいものに、この男も気づいてしまったらしい。



「てか、執事とお嬢様の恋愛って確かタブーじゃなかった?」


「……」


「さすがにそれくらい最初から心得てるだろ?Sランクともなれば」



俺の隠した部分を鬱陶しく覗いてこようとする男に苛立ちすら芽生えた。

うまく隠せれているだろうかと、苛立ちの中にひしひし不安が渦巻く。



「…だから抑えてんだろうが、毎日」



つぶやいた声は脱衣場に向かったそいつには聞こえていなく。

ポツリと静まるリビングに消えた。