「…あの、そんなに離れたらイヤホン外れちゃうよ。ごめんね嫌だった?じゃあ違う方法を……」



「違うから、そうじゃなくて。
…近すぎて落ち着かない」





耳まで真っ赤にして言う柊璃くんにつられて何故か私まで恥ずかしくなる。







「桃子さんこういうの慣れてるんですか」




「慣れてません!普段、織とやるからつい…
ごめんなさい作戦練り直しますから!」






そう言うと片耳のイヤホンを外して私の前に立つ柊璃くん。






私がそんな急に止まれるような反射神経があるわけがなく、気づいたら柊璃くんの胸に飛びこんでいた。






「な、なんで前にっ」



「…わかんないけど」



「じゃあ私にはもっとわからないよ!

…柊璃くん大丈夫?あんまり無理しなくてもいいんだよ、今日はゆっくり休んで柊璃くんのタイミングでまた色々やってこう?

私も柊璃くんが元気になる為に考えるし!」






どうにも落ち込んでいるようで、背伸びをして柊璃くんの頭をポンとする。






「…っえ、」






すると、何故か柊璃くんの手が私の背中にまわされて抱きしめられる形になった。






「柊璃くん人が見てる!ねえ、もう!」






駅に近づくにつれて人が多くなってくる。
大会終わりの同じ陸上部の人たちが私たちを横目で見ながら通り過ぎていく。