目の前に差し出された手に引っ張りあげてもらう。







「汐桜平気?」









大好きな低くて柔らかい声。その暖かい手は奏多だった。






…て、て、手!?
手はまずい、離さないと……離れない。奏多めちゃくちゃ力入れるじゃん。










「奏多、あの」








「……もう離したくない。


汐桜、俺のとこ戻ってきてよ。頼むから」








逸らさず見つめる奏多のその瞳は哀しそうに歪む。







心臓がうるさい。
奏多がこういうこと言うの、初めてだ。







「俺もっとちゃんとするから。
好きだって思ったら口に出すし、汐桜の事も全部知りたい。聞かせて欲しい。

汐桜じゃないとだめなんだよ俺。だから、」






「奏多っ待って、待ってください!
………今、試合中だから」



「…は」







その場にいる全員が私たちを見ている。
普段は表情筋が死んでる奏多も顔が赤い。







静まっていた体育館は、奏多が口を噤んだ瞬間、冷やかしと拍手に包まれた。






「…帰り待ってる」


「は、い」