「晃くん・・・日記読んだよ」

金曜日の放課後。私たちは、2人並んで駅に向かって歩いていた。

「『裏切らないのは、家族だけ』なんて、淋しすぎるよぉ・・・淋しすぎるよ、晃くん」

「・・・」

「つきあったとして・・・私もいつか裏切ると思っているの?」

ぎゅっ。晃くんが唐突に私を抱きしめて言った。

「志保ちゃんは、裏切らないって信じてる。信じることをやめてしまえば、楽になるって分かってるけど、僕は人との温かいつながりがどこかで欲しいって思ってるんだ。今までそれが、うまく、その・・・行かなかっただけで。志保ちゃんを信じてない、わけじゃないんだ。信じてほしい」

真っ直ぐに言う晃くん。そこには誠実さがちゃんとあった。

「私だけじゃなく、親友も出来るといいね」

「そうだな。もっと気楽に、行けばいいかもな・・・あの犬は元気?」

あぁ、ラテ。小さかったあの子もすっかり大きくなった。

「元気に庭を跳ね回ってるわ。学校に行く前に散歩に連れて行っているの」

「早起き、得意なんだね、志保ちゃんは」

「あはは。そうでもないけどね」

ママに、たたき起こされてるもん。

「今度、君の家に行って、あの犬に会いたいな」

「うん、会ってやって。ラテ、って言うの」

イタリア語で牛乳を意味するラテ。見つけたときはどろだらけだったが、洗ってみたら真っ白の犬だった。

「カフェ・ラテとかのラテ?」

「そうそう、真っ白な、牛乳みたいな犬なの」

晃とも仲良くなってくれたらいいな。