「堤! 週末、サークルのみんなでキャンプ行こうって話してるんだ」


 ひとりで大学のカフェにいた私を捕まえ、虹磨さんは隣の椅子に腰を掛けて話を進めた。

 映画や音楽が好きだった私は映画研究会のサークルに入ったのだが、たまたまそこに、一緒のゼミの虹磨さんもいた。
 虹磨さんは音楽の方が向いている気がしたけれど。


「みんな参加するんですか?」

「ああ。ほとんどの人間は参加で返事をもらってる。堤も行くだろ?」


 わざわざ言いに来なくても、出欠はメッセージアプリで聞けば済む話なのに。
 だけど欠席する人が少ないという情報を聞けたのは良かった。私も参加しよう。

 きっとあの人も……私が気になっている葉山くんも来るだろう。
 キャンプはどうでもいいが、葉山くんに近づけるチャンスだ。

 葉山くんとは同級生で、サークルで知り合った。
 彼は昔から映画が好きだそうで、話していても話題に困らないし楽しい。


 キャンプ当日、私は積極的に葉山くんの近くにいるようにした。なにをするにもペアになれるように。

 調子に乗った私は、彼に恋愛の話も振ってみた。
 過去の話が気になったわけではなくて、私のことをどう思うのか、そこを知りたかったからだ。

 だけど、一番聞きたくなかった言葉を言われてしまった。


「堤さんには、虹磨さんがいるもんね」