パソコンで文章を打ち込みつつ、私とまったく違う会話をする美和さんの頭脳に感心してしまった。
 私なら絶対、どちらかひとつしか無理だ。さすがだなぁと、尊敬のまなざしを彼女に向けた。


「虹磨さんが自分の上着を貸してくれたので」

「またカッコいいことしちゃって! ドラマみたいね」


 あははと笑いつつ、私も仕事をしなくてはとファイリングの作業に取り掛かる。


「そのあとハワイアンレストランに連れて行ってもらったんですけど、すごく夕日が綺麗に見えるお店で素敵でした」

「それはよかった。仕事をほったらかしてデートに誘ったんだから、それくらい張り切って当然よね。虹磨さんは絢音ちゃんより全然大人だしさ」


 あれはデートだったのだろうか。大和さんとの一件を謝るためではなくて?

 いや、そんなことよりも……“大人”というフレーズで思い出してしまった。

 大人の色気がたっぷりだった昨夜の虹磨さんの表情が頭に浮かび、急にカーッと顔に熱が集まってくる。
 あんな人にキスをされたら、誰でもイチコロで落ちてしまう。私の姉みたいなタイプを除いて。