あとで美和さんに聞いたのだけれど、社名の名付け親は大和さんらしい。
 雪哉さんは少し年下だが、大和さんを通じて虹磨さんと知り合い、仲良くなったのは一年ほど前からだそうだ。
 ちなみに塩大福が好きなのも雪哉さん。


 この日、バイトが終わったその足で円香のマンションへと向かった。
 虹磨さんと大和さんが友人関係で、オフィスにやってきたことを話すと、大きな落雷があったかのように驚いていた。

 私が大和さんと直接会話を交わしたと言うと、羨ましいを通り超えて(ねた)まれたのだけれど、サイン入りのペンケースを渡すといっぺんに機嫌が直った。

 今日はイケメンたちに囲まれてふわふわと浮足立ち、なんだか夢を見ているようだった。

 だけど今になって思い出すのは、雪哉さんの爽やかな笑顔でも、大和さんのカッコよさでもない。 
『絢音は俺のだから』とふたりに釘を刺すように言い放ったときの、虹磨さんの顔だ。

 私が虹磨さんの恋人になった事実など微塵もないのに、すごくドキドキしてしまって、時間が経った今でも心臓がギュッと掴まれたように痛い。

 イケメンには熱を上げないと決めたのに、なんだかそれが揺らぎそうな予感がする。これは非常にまずい。