これを円香に渡したら、うれしすぎて失神するかもしれないな。
 どこかに飾って、毎日拝むのがルーティンになるかも。

 そんなふうに円香の反応を想像しながら、ペンケースを受け取ろうと右手を差し出したのだけれど。
 大和さんは突然、ペンケースを自分のほうへ引っ込め、私の手首を掴んだ。


「おい、セクハラ!」


 私の手をじっと見つめる大和さんの行動を止めようと、すぐさま声を発したのは雪哉さんだった。
 
 私は驚いたものの、そこに性的な意味を感じなかったので、振り払うことなくされるがまま固まってしまった。


「ああ……ごめん」


 大和さんは我に返ったように私の手にペンケースを握らせ、そのまま解放する。いったいどうしたのだろう? 
 横目で虹磨さんの様子をうかがってみたけれど、私たちのやり取りをただ見守っているだけだった。