「で、昨日彼氏が泊まったって?」


 円香は童顔でかわいらしい見た目とは逆に、実はビールが大好きで飲みっぷりもいい。
 性格は裏表がなく、いつも私のために思ったことをはっきり言ってくれる。


「ふたりで朝寝坊? 夜中まで起きてたからだよね。やらしいなぁ」

「変な想像しすぎだよ。利樹のバンドが昔出たライブの動画を見せてもらったりしたから!」


 言い訳をしてみたものの、昨夜彼とベッドを共にしたのは間違いではないので、冷やかされたら赤面しそうだ。
 動画を鑑賞したのも嘘ではないけれど。


「絢音はかわいいんだし、もっとふさわしい人がいるって!」


 毛先だけパーマのかかった肩までの髪を耳にかければ、円香は私のその仕草をいつもかわいいと褒めてくれる。
 だけど私は自分がたいして美人ではないと知っているし、今のもお世辞だとわかっている。


「だって私、利樹のファンなんだもん。歌ってるとき、めちゃくちゃカッコいいの」

「歌の上手さは普通だよ」

「えー、円香は厳しいなぁ。作ってる曲だってすごくいいよ!」