わけあってイケメン好きをやめました

「あ、えーっと……ちょっとした疑問があるとしたら、社名なんですけど……」

「社名?」

「“ゲイン”って、アンプについてるやつですか?」


 咄嗟とはいえ、ずいぶんと間抜けな質問をしたと自分でも思う。
 どんな社名であれ、バイトの分際の私には関係ないではないか。


「正解だ。君は、音楽をやってるのか?」


 恥ずかしくて下げていた視線を上げると、不思議そうな表情をする虹磨さんと目が合った。

“ゲイン”とは、ギターやベースのアンプについていて、入力の音量やバランスを整える役割のものだが、私がそれに気づいたことに彼は驚いたようだ。


「いえいえ! 音楽は単に好きなだけなんです! まったくの素人です!」


 危ない。なんてことを口にしたのかとバカな自分を叱りたい。
 元カレが“RED PURPLE”のボーカルだったとは言えないし、ギターを弾くのが趣味なのは隠しておかなけれないけないのに。

 あのバズった動画が私だとバレたら、なんだか面倒そうだ。