「私、気がついたんだけど、初めてできた彼氏のときから、ずっと同じような失敗してる」

「ん?」

「一目惚れっていうか、イケメンの男性を見るとカッコいいなぁってポーッと熱を上げちゃう。利樹の場合はそこに音楽って要素もプラスされたから、すぐに好きになったんだよね」


 私は惚れやすい……というより、イケメンに弱い。それは自覚している。
 顔だけで相手を判断しているつもりはないのだけれど、結局見た目に惹かれて突っ走るからダメなのだと、姉からも何度もダメ出しをされている。
 きちんとした恋愛がしたいのなら、落ち着いて相手を見極め、向き合わないといけない、と。
 私から言わせれば姉は慎重すぎると思うが、いつも痛い目を見ている私は、ぐうの音も出ない。


「円香、私やめる!」

「なにを?」

「イケメンにはもう惹かれない! 次はやさしくて浮気しない人を選ぶ!」


 円香は私と目が合い、一瞬固まったあとにプッと吹き出して笑った。


「よかった。二度と恋しないって言いだすかと思ってたから。でもちゃんと次の恋を考えられるみたいだね」

「すぐに次にはいけないけど……でも、またいつか恋愛はしたいな。だって私、まだ二十三だもん」


 恋愛は卒業、この先一生ひとりでいると宣言するにはまだ早い気がする。
 私自身がまだ未熟だから、うまくいかない部分もあるのだと思っている。


「絢音が今までとは正反対の無害な人を選ぶなんて想像つかないけど、顔だけしか取り柄のない男はやめるべし!」


 私は円香の助言にうなずいて、再びタオルで目元を冷やした。

 恋愛を卒業するのではなくて、こうして浮気された挙句破局するのは、今回で終わりにしたい。
 今は生々しい心の傷も、時間の経過と共にカサブタになるだろう。