「ここ……なんですか?」


 異世界空間へでも飛ばされたかのように、絢音はポカンとしてひどく驚いていた。

 それはそうだろう。
 音楽スタジオにあるような本格的な器材があるので、この部屋が普通ではないと嫌でもわかる。


「俺の仕事部屋。実は……作曲の仕事もしてる」


 トントンと一番近くにあったスピーカーを指で叩きながら笑ってみたが、絢音は固まったまま無反応だ。


「大和の曲を作ってるのは、俺なんだ」

「えぇ?!」


 さすがにここまで言えば、彼女は大声を出して驚いた。


「言いそびれてた。ごめん」


 隠すなんてひどい! と怒るだろうか。
 それとも、なぜすぐに言ってくれなかったの? と泣き出すかも。

 泣かれるなら怒るほうがまだマシだな、などと考えていたが、絢音は俺の予想を遥かに超えてきた。