わけあってイケメン好きをやめました

「もっと美和さんを大事にしてください」


 雑談の中で絢音から唐突に言われた言葉だ。
 意味が分からなくて俺は「え?」と聞き返す。


「こんなに虹磨さんを理解してついてきてくれる人はいませんよ?」


 たしかにそうだ。俺が作曲の仕事に時間を割かれていても、堤がいるから会社はやっていけてる。
 それを十歳年下の絢音に指摘されて再確認することになろうとは。


「絢音はほんとに堤が好きなんだな」

「はい。私が男なら絶対惚れてます!」

「ぶはっ!」


 絢音が男なのも困るが、堤が男じゃなくて良かったと、心から思う瞬間だった。
 堤がライバルだとしたら強敵じゃないか。


「虹磨さんも美和さんが好きですか?」

「めちゃくちゃストレートに聞いてきたな」


 堤を好きかどうか、それは大学時代から何度聞かれたかわからない。
 付き合いが長い連中からは、さすがにもうその質問を受けることはないが。