わけあってイケメン好きをやめました

 ソファーに深く腰掛けていた大和が、腕組みをしたまま体を前に傾ける。


「年上の虹磨さんにこれを教える日が来るとは思わなかったなぁ」

「……なんだよ」

「それは“恋”。虹磨さんはすでに、絢音ちゃんに惚れてる」 


 さすがミュージシャンだ。歯の浮くようなセリフを平然と言われ、俺のほうが恥ずかしくなった。

 だけど、バカなことを言うなよ、と反論できなかった。
 図星を指されているからだ。



 大和は諦めなかった。
 大和自身も、絢音が動画の人物かどうか、白黒はっきりつけたかったのかもしれない。

 絢音をカラオケに無理に誘おうとして、彼女を怖がらせていることに、大和は気づいていなかった。
 俺が止めに入ったところで、大和はやっと我に返る。

 動揺を隠しきれずにいる絢音を、俺は半ば強引に車に乗せて海へと向かう。