わけあってイケメン好きをやめました

 しばらく何日かして連絡が来て、俺が彼女を面接することになった。
「そんなのなしで、採用でいいだろ」と堤に伝えたら、形式なのでやってくれ、と。

 面接に現れた絢音は、カフェの制服姿とは違って大人びて見えた。
 上品で控えめなピアスやネックレスをつけているせいかもしれないが。

 しかし履歴書を見ると実年齢は二十三歳だ。俺が想像したよりも若い。


「“ゲイン”って、アンプについてるやつですか?」


 最後に質問はないかと聞いたら、絢音が社名のことを口にした。
 驚くのと同時に、俺は自然と眉根を寄せて彼女を見つめる。


「正解だ。君は、音楽をやってるのか?」

「いえいえ! 音楽は単に好きなだけなんです! まったくの素人です!」

「アンプをイジらなきゃ、“ゲイン”を知らないと思うが?」


 絢音に疑念を抱いたのは、これがきっかけだった。
 

「ギターは……コードがわかる程度です」


 そうは言いつつ、世間一般と比べたら音楽には詳しいのだろうと想像がついた。
 だけどそれを隠すのはおかしいと、このとき俺はそう感じたのだ。