「若い女の子が歌ってるんだけど、曲もいいのよ」

「その人を探してるんですか?」

「そうなの。虹磨さんがコンタクトをとりたいって」


 店員の子が小首をかしげる。
「見つかるといいですね」と言葉を残して立ち去って行ったので、残念ながら空振りみたいだ。

 俺のほうに一瞬視線を向けた彼女はどこか所在なさげというか、挙動不審のような感じがしたが、それが小動物のようでかわいかった。
 ニコニコした笑顔も花が咲いたように癒し系で。


「どうかしました?」


 彼女の後姿をボーッと見つめる俺を、堤が訝し気に観察する。


「いや、かわいいなと思って」

「は?」

「笑顔がかわいかった」


 二回も言わせるなよ。
 堤はわざとらしくタブレットに視線を戻したけれど、笑いを必死にこらえるように肩が揺れている。