「美和さん、俺……がんばっていいですか?」

「……ん?」

「虹磨さんは絶対に、美和さんのことを名字でしか呼びませんよね。信頼を得て、俺はいつか“美和”って堂々と呼び捨てにできる関係になりたいです」


 フフッとハニかんで笑った徹平くんの顔は、やっぱりどこかふわふわしていて……私の乾いた心を潤わせた。純粋で癒される。


「じゃあ、今呼んでみる?」

「え?!」

「練習だよ、練習! ほら、がんばって!」


 徹平くんを本格的に照れさせようとするなんて、私も性格が悪いな。
 だけど予想通り火がついたように顔を赤くする徹平くんを、かわいいと思ってしまった。


「み、……美和」


 どうしよう。想像以上にたどたどしくて、私まで恥ずかしくなってきた。