わけあってイケメン好きをやめました

 虹磨さんはモデルも辞めたし、音楽や俳優として演者の道には進まなかった。
 そんな彼が大和のサポートをしていることだけは知っていたが、詳しくは聞いていない。


「実は……最近、作曲の仕事を請け負ってるんだ」

「虹磨さんが? 作曲?」


 虹磨さんはたしかギターもキーボードも得意だと言っていた気がするので、作曲をしても何ら不思議ではない。
 だけどそれを仕事にしているのには驚いた。大和の影響だろうか。


「俺が今から言うことは絶対誰にも言うなよ? 秘密な」


 虹磨さんが柄にもなく真面目な顔をしたので、うなずきつつも息を飲む。


「最近の大和の曲は、俺が作ってる」

「は?! えっと、たしか、し……し……」

「“Xinobu(しのぶ)”な。それは俺だ」


 さすがに驚きすぎて、心臓が止まるかと思った。

 大和はこの一年くらい、自分で曲を作っていないのは知っていた。
 作曲者名には別の名前が記されていたし、曲調もあきらかに今までとは違っている。

 それがなぜなのか私は知る由もなかったし、大和の気まぐれなのかと軽く考えていたけれど、まさか虹磨さんが関わっていたなんて……