そう思って自分の手のひらを見つめる。


自分もできるだけのことはやった。


だからもういいんだ――。


「ではコンクールでのソロ奏者の発表です」


音楽室の空気に緊張が走る。


少しでも動いたら切りつけられそうなピリピリした空気。


アサミはもう顔をあげることもできなくて、少しかたくなった指先を見つめている。


「コンクールでフルートのソロを担当するのは……」


キュッと目を閉じる。


耳までふさいでしまいたくなるのをグッと我慢して、先生の言葉を待つ。


「ニナさん」


その声が鼓膜を震わせた瞬間体の力が抜け落ちていくのを感じた。


そうだよね。


わかっていたことだ。


それでもアサミの頭の中は真っ白になって、なにも考えられなくなる。


ジワリと涙が浮かんできたそのときだった。


「そしてアサミさんです」


先生の声に顔をあげた。


え……?