それから10分後、準備室にいた先生が部室に戻ってきていた。


生徒たちの私語はすーっと消えていき音楽室は静まりかえる。


普段この教室で大きな音が立てられているなんて考えられないくらいだ。


「アサミさんもニナさんも、とてもよく頑張りましたね」


ステージ上に立った先生がアサミとニナにそれぞれ視線を向けて微笑む。


アサミは小さく頷いて答えた。


確かにニナは頑張っていた。


でも自分はお世辞にも頑張ったとは言えない。


何度も部活をサボり、ニナよりも自分の方が上手だと心のどこかで笑っていた。


まわりからちやほやされていい気になっていた。


そんなことを思い出して暗い気持ちになってくる。


きっと先生はそんな私のことをお見通しだ。


今更気がついたって遅いこと。


ソロパートはニナに決まりなんだろう。