自分の席へ戻る間にも拍手は続いていた。


「サトコ、私の演奏どうだった?」


先生が合否を決めている間、アサミはこっそりサトコにそう質問をした。


「すごく良かったよ! 私感動しちゃったもん」


サトコは興奮気味に言う。


その言葉に嘘はなさそうだけれど……。


「でも、下手くそだったよね?」


「う~ん、技術は落ちたのかなって思った。でもね、感情がすごく伝わってくる演奏だったよ。あぁ、アサミは音楽が好きなんだなってわかったもん」


「本当に?」


「嘘なんてつかないよ」


サトコは笑って答えた。


アサミはひとりでいるニナへ視線を向けた。


ニナは落ち着かない様子で周囲を見回し、何度も居住まいを正している。


その様子を見ていると、途端にアサミも落ち着かない気分になってきてしまった。


アサミか、ニナか、もうすぐ決まるんだ。


そう考えると心臓がドキドキとはね始めて、制服の上から胸に手を当てた。


大丈夫。


今の自分にできるだけのことはやったんだから。


あとは信じて待つことしかできないんだ。