☆☆☆

演奏はどうだったのか? 


自分ではよくわからなかった。


ただ夢中になって吹いて、そしたらだんだん楽しくなってきて、気がつけば最後まで吹ききっていた。


部室内はシンとしていて拍手は聞こえてこない。


あぁ、やっぱり今の私じゃダメだったんだ。


そう思った次の瞬間だった。


割れんばかりの拍手が部室内に響き渡ったのだ。


アサミは驚いて部員たちを見つめる。


立ち上がって拍手している生徒もいれば、目尻に浮かんできた涙をぬぐっている生徒もいる。


アサミはその光景を信じられない気持ちで見つめていた。


だって自分の能力はもうないはずだ。


あれだけ心を震わせた演奏は、もうできない。


それなのに、どうして?


「アサミさんありがとう。2人共素晴らしかったわ」


先生に肩を叩かれてアサミはまばたきをする。


素晴らしかった?


本当に?