「サトコも部活出ないとでしょう?」


「う~ん、正直私はもういいかなって思ってるの」


紙パックを手の中で持て遊びながらサトコはぎこちない口調になって答える。


「え? どういうこと?」


「だって、次のコンクールに出場した後は引退でしょう? 私がフルートのソロに選ばれる可能性はゼロだし、なんか急にやる気がなくなっちゃったんだよね」


サトコは終始うつむいて話した。


「そんな。でも、最後のコンクールだからみんなで頑張らないとダメじゃん」


「そんなのわかってるよ! だけどさ、ソロパートのことを先生から言われたときに、私じゃなくてニナが選ばれたんだよ? 私よりニナの方が上手だってこと!」


サトコは長いあいだニナよりも自分の方が上手だと思って演奏を続けてきたのだ。


それが違った。


自分の思い上がりだった。


そう思い知らされた瞬間、努力したいという気持ちまで砕け散ってしまったのだ。