『ニナさんも頑張っているけれど、ほとんどあなたに確定かもしれないわね』


あの言葉を思い出すと自然と頬がニヤけてしまう。


「でも、あれってニナにも同じようなことを言ってるんじゃない? 元気づけるためにさ」


「そうだとしても、腕前が全然違うじゃん。そのくらい先生だってわかってるって」


そうだろうか?


アサミはまだ練習を続けているニナへ視線を向ける。


ニナは昨日と同じようにただ黙々と、無駄話しもせずに熱心にフルートを吹く。


時折眉間にシワを寄せて楽譜になにか書き記し、額の汗をぬぐいながら。


「ね、今日はかき氷食べに行こうよ! 年中やってる美味しいお店があるんだって、友達に教えてもらった!」


サトコは強引にアサミの腕を掴んで歩き出す。


「あ、ちょっと!」


こけそうになったアサミは慌ててサトコについて行ったのだった。