その日のアサミも居残り練習をするつもりでいた。


ニナと2人で練習することでお互いに今どれくらいのレベルにいるのかがわかる。


「アサミ、今日も居残りなの?」


時間になっても教室に戻ってこないアサミに、サトコが声をかけに来た。


「うん。もう少し練習してから帰る」


「どうして?」


首を傾げて質問されて、アサミは目を見開いた。


「どうしてって、ソロパートもかかってるんだし、練習しなきゃでしょう?」


するとサトコはプッと吹き出してしまった。


「まだニナをライバルだと思ってるの?」


「え?」


だって、ソロパートが吹けるかどうかはニナと争って決めることになる。


ライバル視しても当然のことだった。


「ここだけの話だけどさ、誰もニナが吹けるなんて思ってないよ?」


顔を近づけて小声でそう言われて、アサミはまばたきを繰り返す。


「いくらニナが上達したって、アサミに勝てるわけないじゃん。大木先生だって、ほとんどアサミで決まりっていいかたしてたしさぁ」