蛍光灯の光を受けながら様々な楽器が音を奏でている。


ここは恐怖中学校吹奏楽部。


部員数は50名を超える大きな部活動の1つだった。


恐怖中学校の吹奏楽部は毎年県内の中学校コンクールでは3位以上の成績を収めていて、中学校の中でも特に気合の入っている部活動だった。


「アサミ、今日も調子いいじゃん!」


友人のサトコに声をかけられてアサミはフルートから口を離した。


アサミもサトコも今年年生で、最後のコンクールを控えている。


そのコンクールが終われば3年生は部活動を引退することになるので、今から悔いのないように練習に励んでいるのだ。


「そう? ありがとう」


アサミは演奏しやすいように長い髪をひとつにまとめて、赤いリボンを付けている。


サトコはショートカットで、同じフルートパートをふいていた。


「アサミなら音楽学校行けるでしょ」


「そんなことないよ。すごくレベルが高いって言うし」


「だけど高校に入ってもフルートは続けるんでしょう?」


「うん。一応、吹奏楽が強い高校を希望はしてるよ」


答えながらも、現実はそれほど簡単ではないけれど、と頭の中で考える。