「わ、わかったよ。あんたの言うとおりにする」


答えたのはカツユキだった。


カツユキはジュンイチの防犯ブザーとテツヤを交互に見ている。


カツユキも防犯ブザーの存在に気がついていたみたいだ。


テツヤは小さく頷いてそっと手を伸ばす。


「俺たちが犯人ってことで問題ない。だから、友達を離してくれ」


カツユキはそう言いながらゆっくりと移動して、男の視線を防犯ブザーから遠ざける。


「物分りのいい友達で命拾いしたな」


男がナイフを持つ手の力を緩める。


そのタイミングでジュンイチが男の腕に噛み付いた。


ナイフが音を立てて落下する。


落ちたナイフをカツユキが取り上げて男へ切っ先を向ける。


そしてジュンイチは転がるようにして男から逃げる。


そのときにはすでに防犯ブザーの音が家中に響き渡っていた。


隣の家から人が出てくる音、近づいてくる音が聞こえてくる。


「どうした!? 大丈夫か!?」


窓から隣の家の男性が顔をのぞかせたとき、テツヤはまた力を失ってその場に座り込んでしまったのだった。