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「本当にありがとうね」


おばあさんは何度も何度も3人へ向けて頭を下げた。


シワシワの手で3人の手を握りしめて目尻に涙を浮かべて。


「俺たちは当然のことをしたまでです。またなにか困ったことがあったら手を貸しますから」


テツヤは照れくさそうに頬を赤らめながらも、背を反らせて言った。


周囲にはまだ警察官がいて物々しい雰囲気が残っている。


けれど被害者が老人だったことを考慮して、今日のところは全員帰ることができるようになっていた。


昨日みたいにひとつの事件につき何時間も拘束されていたら、探偵としての仕事にも支障が出てくるので、ありがたいことだった。


「なぁ、もう1度走ってみないか?」


帰り道の途中、カツユキにそう言われたのでテツヤは足首を回した。


ひったくり犯人を追いかけて走ったとき、体は軽くて足は自分のものとは思えないくらいに前に出た。


風を切って走る音が聞こえてきて、その風は自分が起こしているものだとわかった。


思い出すだけでもとても気持ちがいい。