翌日の練習中、途中で部室に呼ばれたアサミたちはフルートを片手に壁際に立って先生の話を聞いていた。


「みんな聞いて! 課題曲の発表する日を決めたから」


先生のひとことで教室内はすぐに静になる。


アサミは背筋を伸ばして先生を見つめた。


今練習している課題曲で、ソロパートの演奏者が決まるのだ。


アサミはゴクリと唾を飲み込んだ。


「課題曲の発表は来週の水曜日にすることにしました。それまでにみなさんしっかり練習しておいてくださいね。あまりできの悪い状態だと、コンクールの出場ができなくなりますよ!」


先生は最後に脅し文句のようにコンクールのことを出してきた。


だけど今まで恐怖中学校吹奏楽部がコンクールに出場できなかったことなんて、1度もない。


「それと、アサミさんとニナさん」


名前を呼ばれて更に背筋が伸びた。


斜め前にいるニナは少し猫背気味で、不安そうな雰囲気をまとって先生を見つめている。


「来週の水曜日の課題曲で、あなたたちどちらかにコンクールでソロをしてもらうか決めることになります。他のみんなより少し重要な立場だから、頑張ってね」


そう言われてアサミは息を吸い込んで「はい」と返事をした。


ニナも同じように返事をしたようだけれど、その声はとても小さくて聞き取れないくらいだった。


きっと自分の演奏に自信がないのだろう。


それなのにソロに選ばれるかもしれないと思って、緊張して戸惑っているのだ。