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家にかえってからアサミはコンクールの話を両親にして聞かせた。


本当はまだソロパートをすると決まったわけじゃなかったけれど、もう確定したかのように話をした。


そうすることで喜んでもらいたかったし、自分も安心したかったのだ。


こうして声に出していると、それは事実になるなんて事も言われているんだし。


「すごいじゃないか! 3年生最後のコンクールでソロに選ばれるなんて、大したもんだな」


お父さんが上機嫌に言い、ビールをひとくち飲んだ。


「えへへ。まだ、どうなるかわからないんだけどね。私以外にも上手な子はいるんだし」


「それでもアサミで決まりなんでしょう? さすがねぇ」


お母さんは関心したようにそう言って、スープのおかわりを出してくれた。


一瞬頭の中にニナの顔が浮かんできたけれど、2人にはそのことは黙っておいた。


友人からも家族からもお祝いされたアサミはすっかりその気になっていたのだった。