それも随分昔のカメラで、撮影するとすぐに写真が出てきて映像が浮かび上がるものだった。


ポラロイドカメラと呼ばれるもので、実物を見たのは初めてだった。


「おや、お目が高いね。そのカメラは最近では出回らなくなって、普通には手に入らないものなんだよ」


いつの間にか男性店員が隣に立っていて、笑顔で解説してくれた。


「映画の中で見たことがあります」


ユキコはそう答えて手の中のポラロイドカメラをジッと見つめた。


重厚感のある見た目にずっしりと重たいそれはユキコの手にぴったりとフィットしているように見えた。


棚に戻そうとしたけれど、どうしても手放すことができなかった。


そうだ。


これを使って幽霊を撮影すればいいんだ。


そうすれば現像に出す手間も省けるし、雰囲気のある写真が撮れるかもしれない。


「これください」


気がつけばユキコは男性店員へ向けてそう言っていた。


「ありがとうございます。フィルムに限りがあるから、500円ね」


「はい」


ユキコは男性店員に500円玉を一枚渡して、お店を出たのだった。