ユキコがすべてを話し終えると、ユリは大きく息を吐き出した。


こころなしか顔色も良くないし、両手で自分の体を抱きしめるようにしてさすっている。


「それから、あの洋館には母親の幽霊が出るようになったらしいよ。自分ももうすでに死んでいるのに、まだあの洋館で家族を探し続けているんだって」


「それ、少しだけ悲しい話だね」


「そうだね」


ユキコは頷いた。


ユキコもこの話を聞いたときは、母親が可愛そうだと感じた。


最も、ユキコに話をきかせてくれた子も他の誰かから話を聞いてきたから、噂の出どころがどこなのか、噂が本当なのかどうかはわらないままだ。


「そういう噂があるから男子たちはよく洋館にきもだめしに行くんだね」


途端に現実に引き戻されるようなことをユリが呟く。


ユキコは笑って「そうかもね」と、頷いた。


この恐怖中学校に通っている生徒の中で、あの洋館がお化け屋敷だと知らない子はきっといない。


噂の内容は脚色されて変わってきているみたいだけれど、先輩たちの時代からずっと受け継がれてきた噂話だ。


そのため恐いもの好きな男子たちがきもだめしとしてあの洋館へ向かうことも少なくなかった。