「校長室に飾ってあるモナリザの絵は夜毎微笑みかけてくるんだって!」


1年C組の教室泣いにユキコのはしゃいだ声が響いていた。


6月下旬、梅雨明け間近の教室内はまだジメジメしていて蒸し暑い。


しかしもうすぐ始まる本格的な夏に向けてユキコとユリの2人はこの恐怖中学校に伝わっている七不思議を話ていた。


「それ知ってる! だけど私が聞いたのは夜中に絵から抜け出してきて、ウサギや鯉を食べるっていう話しだよ。ほら、この中学校って昔は小動物を飼ってたでしょう? だからそういう噂が広まったんだって!」


ユリは2つに結んだ髪を揺らして熱弁する。


ユキコは自分の話題を横取りされた気分になり、ムッとしてユリを睨む。


「あ、ごめん、つい……」


「別にいいけど。あ、それじゃあ丘の上にある洋館の噂は知ってる?」


「ううん、知らない」


ユリが左右に首を振ったので、ユキコはニヤリと笑顔を浮かべた。


「学校の裏にある丘の上には洋館があって、そこには長い間誰も暮らしていないの」


「うん。それは知ってる」


ユリはユキコの話に頷きつつ、先を促す。