「別に変わったことはなにもなかったね」


30分ほどして洋館から出たユリがホッとした様子でつぶやく。


見た目はおどろおどろしい洋館だけれど、入ってみるとそこまで怖くなかったというのが本音だった。


妙なことも起こらなかったし、幽霊も出てこなかった。


「ちょっと拍子抜けしたね。でも私達は写真を撮影しているから、なにか写ってるかも」


写真は全部で10枚ほど撮影した。


後でゆっくり確認するために、今はリュックの中に入れている。


「それは明日の学校で確認しようよ。今日はもう帰ろう」


茂っている草のせいで虫がたくさんいてユリは噛まれてしまったみたいだ。


さっきからひっきりなしに足をかいている。


「そうだね。今日はもう帰ろうか」


これからまた、両親にバレないように縄梯子を上がって自室へ向かうのだと思うとのんびりしている気分ではなくなった。


ユキコは素直に頷いて、ユリと共に丘を下ったのだった。