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1階にはリビングに客間にダイニングにお風呂、トイレがあった。


キッチンらしき部屋もあったのだけれど、そこは本格的な厨房になっていて料理人たちが出入りしていたのだろうとわかった。


「お金持ちだったんだね」


ユリがため息交じりに言う。


自分たちの生活とはかけ離れているその家に、ユキコもなんとも言えない心境になってきている。


「でもここの人たちはみんな死んじゃったんだよ。病気と自殺で」


いくらお金があっても変えられない運命はある。


それをこの廃墟は物語っているように見えた。


それから2人は2階へと移動した。


階段はほこりを被っていたけれど思いのほかしっかとしていて、ユキコたち2人分の体重を支えてくれた。


「ここは寝室だったのかな」


2階の一部屋開けてユリが呟く。


中を覗いてみるとキングサイズのベッドが中央に置かれていた。


ベッドの真ん中が折れていて使えなくなっているけれど、夫婦がいた可能性は高い。


ユキコはそこの写真も撮影しておいた。