あー疲れた、と嘆く彼の声が聞こえる。

それにくすりと笑ったらスピーカーで会話していたようで、『はなび?』と芹に尋ねている椿。……笑っただけなのにどうしてわたしだってわかるんだ。



「おつかれさま。

修学旅行、天皇寺は関西に行くのね」



『ん、今週末にな。

白金は修学旅行いつ行くの?』



「わたしは12月にグアム」



『ふうん、まだ先だねえ』



『待て。……お前いま白金通ってんのかよ!?

まじですぐ近くなんじゃねーか……!』



『ちょっと芹うるさい』




電話の向こうで、ざわざわと音がする。

何を言っているのかまではわからないけれどふたりがぼそぼそと会話しているのが聞こえてきて、変わらない仲の良さにほっとした。



『なー、はなび』



「ん? どうしたの?」



『俺とデートしようぜ、デート』



……デート?

どうして芹と、と言おうとするよりも早く聞こえてきたのは、『はあ!?』という椿の声で。電話していることを忘れているんじゃないかと思うほどに、わたしそっちのけで会話が進む。



『うるせーな。

メシ行こうって言ってるだけじゃねーか』



『どこが!? 思いっきり、

デート、って言ったじゃねえかよ……!』