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──表示された、ケータイの番号。
着信を知らせるそれに出て、向こうから聞こえてきた声は、相も変わらず知ったものだった。
『よー。元気にしてっか?』
「芹ね」
『お。よくわかってんな』
「わたしの知らないうちにわたしの連絡先が『花舞ゆ』内で回されてるし、面識のある子から順番に連絡が来るの。
おかげさまで毎日声と人物を当てるゲームをさせられてる気分よ」
『おーおーがんばれ。
お前のケータイん中、俺らの連絡先でいっぱいになってんだろ?こりゃあ女子中高生に狙われるお宝品だろうな』
けらけらと笑っている芹。
誰のせいだと、と言いたくなるけれど、わたしのスマホの中が彼らの連絡先でいっぱいになっているのは事実だ。間違いなくレアものである。
「連絡してきた子は、大体メッセージまで送ってくるし。
授業受けてる間に通知が軽く30ぐらいたまるの、どうにかしてくれないかしら」
『お前いま、全国の"ダチがいなくて通知なんか来ねえ"奴らを敵に回したぞ』
「あ、もしかして芹がそのうちのひとりだった?」
『ばっかヤロウ……!
俺にはちゃんと返事してくるヤツがいるんだっつの!』
……冗談なのに。
上の5人の中で芹がいちばん友だちの数が多いことぐらい、わたしも知ってるわよ。
『つーかお前、染と電話で俺らのこと話して2週間ぐらい経ってんだろ?
なんで未だに音沙汰ねーんだよなにしてんだよ』
梅雨も明けたじゃねーか、と彼は言っているけれど。
残念ながらわたしがノアと話をすることと、梅雨についてはまったく関係がない。



