『……うん。
本当はいますぐにでも、って言いたいけど。はなびが意固地だってこと、ここ数日でよくわかったから』
「あら、昔から知ってると思ってたわ」
『知ってたけど、予想以上だったんだよ。
……言い切ってからそんなに経ってねえけど、なんか、俺も意固地になりすぎてたなって』
「……あなたも大概意固地だものね」
でも、椿とデートしたから揺れたっていうのは大きい。
ただ連絡を取り合う関係だったとしたら、わたしの気持ちはこんなにも早く動いていなかっただろうし。
『はなびが、俺らんとこにもどってきてんのか、今のままかわかんねえけどさ……
夏休み……一緒に、花火見に行かねえ?』
夏の風物詩って、色々あるのに。
あえて花火なのかと一人思考をめぐらせて、思わず笑ってしまった。
「はなびと、花火を見たいっていうジョーク?」
『結構真剣に言ったつもりだったんだけど』
「でしょうね。あなた本命の人はどうしたのよ」
『野暮なこと聞くんじゃねえよ。
……いまはお前のこと口説いてんだけど?』
夏の匂いがする夜に。日付が変わった時間に。
色男に、電話で花火を見に行こうと誘われる。……うん、桃なら盛大に騒いでいることだろう。
「……ノアに、誘われなかったらね」
きっと誘ってこないだろうから、行くことになるだろうけど。
今はまだ、そこまで教えてあげない。



