ふっと笑い合って、おやすみを言う。
電話を切ってからもしばらく、ベランダに立ち尽くして。止まらない時間の中で、流れ行く景色を見つめた。
「、」
椿はどうやら、元気にしているみたいだけれど。
連絡が途絶えたのだから、こちらから連絡する必要はないのか。それとも連絡したほうがいいのか。……ふつふつと、考えていたら。
「も、もしもし……?」
『なんでそんな焦ってんだよ』
誰だって、手にもっていたスマホがいきなり振動したらおどろく。
しかも考えていたのが、ちょうど椿のことなんだから。
なんて直接言えはしないけど。
くす、と。楽しげに笑う彼の声が聞こえて、ほっと胸をなでおろした。
『ごめん。ちょっと連絡先、消してさ』
「ううん、」
『染から、はなびが自分から俺らの話ししてくれた、って連絡あって。
ああ、俺ら5人のグループトークがあるんだけど。すげえ仲良いだろ?』
「ふふっ、ほんとに仲良しよね。
……わたしがいなくても楽しそうだから、わたし妬いちゃう」
『ばっ……そういうこと言うのはナシだろ』
「冗談よ、本気にしないで。
でも……そっちにもどったら、入れてくれる?」
今日は、よく眠れる気がする。
肌を撫でる生ぬるい風が、夏の気配を運んできて。──もうすぐ。季節は、夏になる。



