ひさしぶりに顔を合わせたら、さらっと気持ち悪いことを言ってくるノア先輩。
シイといいこの人といい、ホストって全部こうなんだろうか。……いやごめん、絶対そんなことねえわ。
「できれば会いたくなかったんですけど」
「だろうね」
……わかってんなら言うなよ。
ほんとに、この人腹黒いな。はなび実は騙されてんじゃねえかな、ってちょっと不安になる。
「ほら、後ろ乗って。寝転んでもいいから」
それでも一応迎えに来てくれたわけだし。
これでも一応俺の中学の先輩でもあるわけだし。
「どうも」と後部座席に乗れば、車の外で何かを話しているノア先輩と染。
てっきり俺だけだと思ってたのに、なぜか染が助手席に乗った。
「染、帰んの?」
「……いや?」
「俺が乗りなって言ったんだよ。
個人的に話をしておきたかったからね」
個人的に話をしたい、って。
ノア先輩に言われたら嫌な予感しかしねえのはなんでだ。……俺と話をするわけじゃねえのに、底知れなくて困る。
「じゃ、とりあえず行くよ。
車呼ぶってことは歩けないぐらいなのかと思ってたら、椿案外元気そうじゃん」
「……いや、ちょっと逃げたいことがあって」
静かに発進する車の中で、ぽつりと告げる。
俺らのことを一応知っているせいか、「ああ、ね」と納得したようにつぶやいたノア先輩。──車窓越しの空は、気づけば晴れていた。



