ぐるぐると。
頭の中で、変な考えが渦巻く。なぜか不自然にシンと静まった2階で、俺らの視線を浴びながら、ゆるく口角を上げた染は。
「さあ?」と、綺麗に笑うけど。
っ、絶対あるだろ!? 欲薄いとか嘘だろ!?
今その表情見た瞬間に、俺でもぞくっとしたわ……! なんだその色気のある表情……!
「……はなびが今の顔見たらあっさり惚れんじゃね?」
「うん、なんかそんな気がするよね。
欲のなさそうな人間にあんな顔されたら、」
「っ、待ってなんか俺が落ち込むからやめて」
俺じゃ無理って言われてる気がするからやめろ……!
実際無理だけどな!病人をいじめるのやめろ!!
「椿は……ちょっと垂れ流しすぎだよね」
「声掛けられたら下心あんのすぐわかるよな」
「ああもうおまえら……っ」
一応高熱あんだって……!
頭にガンガン響いてんだけど……!
「染さん、ノアさん来られましたよー」
っしゃ……!! これで逃げられる!!
ソファから身体を起こせばちょっとだけふらついたけど、「あ、おい」って心配そうな染の声もそっちのけで階段を下りる。
「なんか嬉しそうな顔してるけど。
椿もしかして、俺に会いたかったの?」



