はなびがそれっぽいこと言ってたし。
染がたまーに連絡してるけど、いつもあしらわれてるし。……あれは面倒なだけかもしんねえけど。
「今日は大丈夫らしいぞ」
「……へえ」
「不服そうだな」
ふっと笑みを見せる染。
俺が不服な理由は、ノア先輩がはなびの彼氏だからだってこと、絶対わかってんのに。……相変わらず染は、嫉妬とかしないんだな。
「染って。……ほんと、無欲だよねえ」
はなびと染が、お互いに抱いてる感情はまちがいなく違うのに。
どこか"分かり合ってる"のが、不思議でたまらない。
「……そうか?」
「ん……
はなびのこと略奪したい、とか言えばいいのに、ってたまに思う」
「ははっ、俺に略奪とか向いてないだろ」
いや、はなびがお前と過ごすのに慣れすぎてるだけで。
お前に略奪されたい女なんて山ほどいるだろうよ。……その欠片にすら興味ないって、知ってるけど。
「染ちゃんってさー」
どこから出してきたのか、エクレアをもぐもぐと頬張っている穂。
言葉の続きを促すようにさだまらない視線をゆっくりそっちへ向けると、穂は誰と目を合わせるでもなく口を開く。
「たぶんこの中で誰よりも男らしくてかっこいいし、色っぽいけど……
つーちゃんみたいな下心、っていうか、欲?みたいなの、感じないよね」



